【Atomic Heart】クリア後レビュー

ゲームレビュー

2023年の7月、マイクロソフトのサブスクリプションサービス、PC Game Passに加入した。
9月に控えるStarfieldのDay1に備えて、事前に少し様子を見に行ったのだ。

その中で、注目タイトルであり以前より気になっていた『Atomic Heart』がGame Pass対応タイトルであることに気が付き、ストーリークリアまで本作をプレイしたのでレビューをする。
ゲームジャンルはシングルプレイFPSシューター。

開発元パブリッシャーリリース日
MundfishFocus Entertainment2023/2/21

新進気鋭のデベロッパーが送り出す 注目のタイトル

本作はキプロス共和国に本拠地を置く、”MUNDFISH”が開発を手掛けている。

MUNDFISHにとっては本作『Atomic Heart』が処女作にあたる作品なのだが、事前に公開されていたトレーラーや情報から、非常に美しく独特な世界観を漂わせており、発売前から注目度が高く、期待されていたタイトルである。

なんと最初のトレーラー映像の公開は2017年7月である、この映像では実際に発売された作品とアートワークが異なる部分も多数あるが、この時点でも魅力的な世界観が存分に伝わってくる。
2023年2月の発売まで長く待ち望んでいたファンも少なくないことだろう。

ロボットと人間が”繋がる”世界

MUNDFISHが現世に送り出した『Atomic Heart』という世界の完成度は、ゲームファンの期待を裏切ることなく、大成功を収めた。
本作の舞台は、”第二次世界大戦に勝利した後、驚異的な科学技術の発展を遂げた1955年のソビエト連邦”という尖りに尖りまくったものである。

そこでは、人間に代わる労働者としてロボットが普及しており、町中のいたるところにロボットがいるのだ。

ボトルを磨いているラフィク君

畜産ロボットレイバラー君



本作のストーリーは、”「コレクティヴ2.0」と呼ばれるネットワークで、全ソビエト人と全ロボットを繋げることで、生活をより豊かに便利にしよう”という政策の実行直前に、研究施設のロボットが人間の虐殺を開始するところから始まる。
物語の主人公であり、特殊部隊に所属するP-3は事態の調査と鎮圧ために研究施設に向かう。

ここから、主人公P-3は目眩く狂気の世界を旅していくのだが、各地のロケーションが唯一無二の空気感を持っており、この世界を作り出したということだけでも称賛に値する。グラフィックも非常に美しい。






クラシック音楽とロボットホラーの融合

本作はサウンドトラックも素晴らしい出来だ。
ロシアの伝統的なクラシック音楽を演出に取り入れており、独特な世界観をより強調している。
映画『ブラックスワン』とイメージが被る部分があるのだが、チャイコフスキーの『白鳥の湖』を用いた劇場のムービーシーンは圧巻。大サビ部分のカタルシスが映像と見事な融合を果たし、鳥肌が立った。


また、ムービー全体の完成度の高さについても語っておきたい。
モーションの素晴らしさは言うまでもなく、画面全体の絵作りやシネマティックなカメラの使い方などが非常に印象的である。

バイオショックライクなゲームプレイ

ゲームの根幹部分であるFPSシューターのシステムは、バイオショックの影響を多大に受けたものになっている。プレイヤーはショットガンやアサルトライフルなどの銃器のほかに、左手に装着するグローブから電撃を出したり、冷気を出したりすることができ、ボスの弱点をついたり、プレイスタイルによって様々な遊び方ができるようになっている。
冷気の放出 フロストバイト


弾薬や回復アイテムなどの資源は限られており、ダンジョンで拾える素材をベースにクラフトを行うことで資源を補充することができる。弾薬の制作、銃のアップグレード、新しい武器や回復アイテムの制作、全ての要素に同じ素材を要求されるため、弾薬を節約して、銃のアップグレードに重きを置くか、はたまた、弾薬をたくさん作って安心を得るか、プレイヤーは常に取捨選択を要求される。リソース管理ゲーの面白さを存分に味わうことができる。

しかし、この「素材集め」の部分がヒジョーーーーーーに面倒くさい。
部屋ごとに開けることのできる引き出しが大量に配置されており、1つ1つ開けていかないといけない。この引き出しを開けるだけの作業は、再序盤から最終盤までずっと要求されほんとうにうんざりした。
1部屋探索するだけでこの手間

また、アイテムや敵の場所を表示する「スキャナー」を起動する操作についても不満点がある。このスキャナーの起動方法は”RBダブルタップ”である。探索のために頻繁にスキャナーを起動していると人差し指が痛くなってくる。

単調かつ大味でストレスフルな戦闘パート

本作の一番の問題点である。
まず、ロボットとの戦闘というリアリティを出すためか、敵が非常に硬い。これは序盤は特に気にならないのだが、ゲーム後半では敵を同時に大量に出すことで難易度を上げてくる。
撃っても撃っても死なないロボが大量に出てきて、数でごり押しされるのは非常に不愉快な体験である。また、そのようなシチュエーションで壁際に追いつめられると、ハマって動けなくなり所謂ハメ殺しになるのもムカつく。

雑魚のバリエーションは非常に少なく、序盤と終盤の違いは数が多いか少ないか、しかない。
ゲームプレイに代わり映えがなく、単調である。

そして特にひどいのが序盤のボス戦である。
特定のスキルを取得しないと回避不能と思われる攻撃を連発したり(ゲーム内ヒント無し)、ジャンプや高速移動で画面外に消え、見えないところから攻撃をしてきたり、理不尽クソゲーを連発してくる。(HOG-7 ヘッジ―お前のことだぞ)

こいつは近接以外の全属性体制持ちなので近接戦闘を強いられるが、動きが速いので画面をメチャクチャ回さないといけず、
プレイヤーの三半規管に直接攻撃してくるクソボス


序盤のボスは死にゲーの如く死にまくるが、ロケットランチャーのような武器「ファットボーイ」を手に入れた後はもうボス戦に苦労することはないだろう。当てると大型ボスでもノックバックがあるので、連打しているだけで勝ててしまうのだ。
難易度の調整は明らかに失敗しているとしか思えないし、面白くない

探索させる気のないオープンワールド

本作はオープンワールドに形式のフィールドになっており、美しいフィールドを探索したいのだが、ゲームシステムがそれを邪魔してくる。
非常に硬い敵たちがフィールドを跋扈しているのだが、なんと無限湧きである
何度倒しても、修理ロボが出てきてすぐに復活させてしまうのだ。
そのおかげでマップをゆっくり探索することは許されない。このゲームは死亡するとセーブポイントまで巻き戻ってしまうのでリスクを取りたくないのである。

また、MAP上にはサブクエストに相当する「試験場」というものが、いくつか配置されているのだが、鍵がかかっていたりして、入り方がわからない。前述の要素により探索もゆっくりすることができない。なにこれ?攻略サイトを使用することが前提になっているとしか思えない作りだ。

試験場は上記のように敵が大量に無限湧きするオープンワールド上に点在しているのだが、なんとこのゲームにはファストトラベルが存在しないのである。さすがにやる気おきねーよ。。。
この美しいMAPをゆっくり探索したかった


総評

  • 唯一無二の世界観
  • 非常に美しいグラフィック/アートワーク
  • ハイクオリティなムービーや演出、BGM
  • 銃を撃つだけでない戦闘要素
  • 序盤からエンディングまで代わり映えのしない戦闘体験
  • 時間の無駄とも思える素材収集
  • 大味で調整不足なレベルデザイン
  • 世界の美しさと噛み合わない、探索を阻害するオープンワールドのシステム

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