【龍が如く7 光と闇の行方 インターナショナル】クリア後レビュー

ゲームレビュー

神室町でのヤクザの抗争を描く『龍が如く』シリーズは、国外では元々『Yakuza』というタイトルで販売されていたが、本作『龍が如く7』から主人公の交代と共に、国外タイトルが『Like a Dragon』と改められている。今作では『龍が如く6』まで続いた桐生一馬の物語に終止符を打ち、新しい主人公、春日一番とともに龍が如くシリーズをリブートする作品になっている。

PC Game passにてプレイ。
ゲームジャンルは「ドラマティックRPG」と公式が打ち出している。

開発元パブリッシャーリリース日
Ryu Ga Gotoku StudioSEGA2020/11/11

『Yakuza』からの決別

『龍が如く7』は世界観を過去作から引き継いではいるものの、ゲームシステムは格闘アクションからターン性コマンドバトルに変更され、主人公は完全新規キャラクターの春日一番に変更された。6までの龍が如くシリーズの格闘アクションは前時代的であり、お世辞にも面白いアクションとは言い難いものだったため、この判断は英断だと思う。本作の発表当時はその大きな方向性の転換から懐疑的な目で見ていたが、実際にプレイをしてみると、桐生一馬に匹敵するような魅力的な主人公と堅実な戦闘システムにより、非常に魅力的なゲームに仕上がっている。過去作からのバトンの受け渡しには大成功をしていると感じた。

「桐生一馬の後釜主人公」というのは開発に於いて非常に高いハードルだったと思う。だが、本作ではそのハードルを見事に乗り越えていることが印象的だ。春日一番は桐生一馬と違い、衝動的で、義理人情に厚く、仲間思いで、少し馬鹿だ。まるでジャンプの主人公のような憎めないキャラクターであり非常にアイコニックである。春日一番と共にどん底から這い上がっていくゲーム体験によって、プレイヤーは強く春日一番に感情移入をすることになる。
本作の主人公を務める春日一番

就職活動をする春日一番

龍と対峙する春日一番

重く、アツく、辛いストーリー ※超ネタバレあり

本作はギャグ要素、バカゲー用要素が非常に強いのだが、対比するようにストーリーがめちゃくちゃ重い。

春日一番には両親がおらず、ソープランドで生まれ、ソープランドの店長に育てられ、中学校卒業後に荒川組の組長に惚れ込み組員になる。その後24歳の時、荒川組のために身代わり出頭をし、殺人罪で18年間服役する。42歳で刑期を終え出所するが、信頼していた荒川組組長に胸を撃たれ、ゴミと共に捨てられ、ホームレスになるところから本作のストーリーが始まる。

いや、辛すぎでしょ。。。。

主人公が陽気で元気な春日一番だからプレイヤーもギリギリ耐えられるが、その後も目を覆いたくなるような悲惨なストーリーが繰り広げらる。だが、そのどん底から、仲間と共に這い上がっていくストーリーがめちゃくちゃアツい。平均年齢40↑ほぼ全員無職の仲間たちと歩んでいく様はなぜか非常にペルソナ5っぽい。



開発スタジオの規模的に仕方のないものなのだが、昨今のAAAタイトルと比較すると、グラフィックやモーションのクオリティは決して高くなく、カメラワークなどの映像演出面でも拙い部分は多数ある。しかし、脚本構成が素晴らしく「ゲームはグラフィックではない」ということが伝わってくる作品だ。

特にシナリオ最終盤、コインロッカーを軸にした伏線回収と、悲惨な光と闇の物語、真澄の姿写しのように真斗を抱えて走り出すシーンの美しさは圧巻。

ただし、ゲーム序盤から中盤にかけては、春日一番の目指すもの、目的が不明瞭であり「今ストーリーはどこに向かって走っているのだろう?」と思い、少々気持ちがだれる部分はあった。

バカゲーに振り切ったコマンドバトル

ここは賛否がわかれる部分だと思うが、戦闘に関しては完全にバカゲーでめちゃくちゃだ。従来のアクションではここまで思い切ったものは表現できなかったと思う。開発陣のやりたいものを詰め込んだ感を強く感じる。個人的には演出に爽快感があり、楽しくエンディングまでプレイすることができた。ただし、ストーリーのシリアスさとの落差は激しいので嫌いな人もいるだろう。
これは理屈はよくわからないが人工衛星からレーザーを撃つ技だ

デリバリーヘルプ(略してデリヘル)というシステムで戦闘中に助っ人を呼ぶこともできる



戦闘システムに関しては、不満点もいくつかある。特に気になるのは全体のテンポの悪さだ。技の発動ごとにQTEが求められるのはボス戦などはいいが、雑魚戦ではさすがに面倒に感じてくる。また、オートバトルはあるものの、高速送りがなくどうでもいい戦闘にいちいち時間がかかるのが億劫だ。ゲーム中盤で街中のエンカウントをなくすアイテムが手に入るが、それまでは上述の要素により町の移動がストレスに感じる。

また、本作にはジョブシステムが採用されており、ジョブ育成の楽しさはあるのだが、明確にジョブ間の使いやすさに差があり、バランス調整がいまいちに感じる。特に範囲/全体攻撃が少ないジョブや武器の入手性が悪いジョブは使いずらい。警備員などは序盤からジョブチェンジできるものの武器が手に入れられずまともに使用できなかった。

ちなみに筆者は、占い師のジョブがお気に入りだ。最初は水晶玉のようなもので殴ることしかできないが、ジョブレベルを上げることによって、祈りをささげることで雷や隕石を落とすことができるようになる。春日一番を占い師にしてエンディングまで走り切った。

圧倒的な”物量”の暴力

このゲームはコンテンツ量が暴力的なまでに多い。そもそもメインストーリーが40時間ほどの長大なものなのだが、過去作にもれずミニゲームの要素が大量にあり、それぞれある程度の作り込みがされており、すべてを遊びつくそうとすると膨大な時間がかかるだろう。また、隠しボスなどRPG部分に関しても、クリア後のやり込みコンテンツがしっかりと収録されている。
本作の目玉ミニゲームは会社経営だ

総評

長く続いていた過去作品に囚われず、見事に新主人公へのバトンタッチを成功させた名作である。春日一番というアイコニックで愛されるキャラクターを生み出した点を特に評価したい。戦闘システムに関しては次回作以降で改善されていくことを期待する。

  • 過去作からの華麗な主人公交代
  • 春日一番という魅力に溢れる主人公
  • 伏線が見事に張られたストーリー
  • バカゲーに振り切った爽快な戦闘
  • ストーリーを含め圧倒的な物量のゲーム要素
  • ゲーム序盤から中盤、目標の不明瞭さが若干のダレを生んでいる
  • 戦闘のテンポの悪さ
  • バカゲーに振りすぎた戦闘は賛否両論か

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