本作『ペルソナ3リロード』(以降P3R)は、2006年にPlaystasion2で発売された『ペルソナ3』のリメイク作品である。『ペルソナ3』は以降のペルソナシリーズに引き継がれる「1MORE」や「総攻撃」などの戦闘システムや、「日付」の概念を最初に取り入れたペルソナシリーズの礎となっている作品である。
私は15年程前に原作をプレイしていたが、ストーリーについてはほぼほぼ忘れていたので、新鮮な気持ちで楽しむことができた。以下は70時間ほどのプレイでNormalモードのシナリオをクリアしたレビューである。
開発元 | パブリッシャー | リリース日 |
ATLUS | SEGA | 2024/2/2 |
原作への愛が生み出した偉業
P3Rは原作を非常に忠実に再現している作品だ。原作との違いを言葉で表すと「戦闘システムとグラフィックスを最新のものにしたペルソナ3」である。ではこの作品の価値は戦闘システムとグラフィックなのか?と問われると、答えは”否”である。
今作が成した偉業は、原作の世界感の再解釈と、見事なアートワークへのアウトプットである。
原作より、ペルソナ3という作品のテーマは「死という生命には抗えない運命」と「命の意味」であり、これらのテーマを学園物のヤングアダルトフィクションに落とし込んだ作品である。そして、今作P3Rのリメイクチームはこの世界感を爽やかな青と再定義したのである。
P3Rは全てが青い。ロード画面やメニュー画面などのUIから、キャラクターの影に至るまで、とにかく全てが青いのだ。そして、青を基調とした美しいアートワークが、プレイヤーを儚くも爽やかな世界観に浸らせるのである。
チャレンジングであり、原作への深い理解と愛情が感じられる素晴らしい世界のリメイクだ。
これはもう革命でしょうが
今まで数々のゲームをプレイしてきたが、”メニュー画面を動かすのが楽しい”という経験は初めてだ、これはもう革命でしょうが。今後他のメーカーは間違いなく参考にするであろう秀逸なデザインである。ゲーム業界に新たなマイルストーンが置かれる瞬間に立ち会えたことに感動している。
快適なゲームプレイへの探求
P3Rをプレイする前は「戦闘システムはペルソナ5準拠」となぜか思い込んでいたのだが、本作の戦闘システムはペルソナ5をベースにさらに進化している。特に素晴らしいのがでの弱点スキルの呼び出しである。アナライズ済みの敵への有効打を持っている場合、
今作から追加された、“オウルギア”(ゲージを溜めて打つ必殺技)も素晴らしい。属性相性が悪く、有効打が無いような局面でも、耐性無視で大ダメージを与えられるため、戦闘がぐだぐだと長引くことがない。
しかし、戦闘に関しては残念な部分も残している。これは原作を忠実に再現したが故の、原作から地続きの問題点であるが、先ず敵のデザインが序盤から最終盤まで変わらず退屈だ。数種類のデザインの敵が色違い(なんなら色すら変わらない者もいる……)で永遠に最後まで使いまわされる。見た目がほぼ同じなのに出てくる度に弱点属性が変わっているのもどうにも納得感がない。
また、タルタロスと呼ばれるダンジョンの探索も単調だ。ダンジョン内では特にストーリーなどはなく、替わり映えのしないマップを上を目指してひたすら歩くだけなので、単調に感じる。終盤は敵をかわしながら、階段にダッシュするだけのゲームになってしまった。
ストーリー
ストーリーについては原作を忠実になぞっているが、刷新されたグラフィックスとペルソナチームが作り出す素晴らしい映像表現により、原作よりさらに没入度の高い体験ができる。
しかし、ストーリーにも原作に忠実であるが故の問題点がある。中盤あたりまでストーリーの展開が緩やかであり、「日付」が進まないと進行しないシステムと相まって、なんか全然話進まねーなというダレた感覚になる部分もある。
しかし、終盤に向けて加速度をつけて走り出す残酷なストーリーはプレイヤーの心に強烈な傷跡を残す内容になっている。少年少女達、命を持たない戦闘兵器、そして勇敢なわんこが、死という運命にどのように立ち向かい、命にどのよう答えを出すのか、是非ともプレイしてほしい傑作だ。
総評
間違いなく傑作JPRG、傑作リメイクである。原作の悪い部分を一部引き継いでいるのが玉にキズ。
- 原作の良さを残しつつ、現代的リメイクを見事に成功させた傑作
- UIなど画面全体を活かしたチャレンジングなアートワーク
- ペルソナ5をさらにブラッシュアップした戦闘システム
- 原作の悪い部分が一部継承されている
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