【真・女神転生V Vengence】クリア後レビュー

ゲームレビュー

本作は2021年11月11日にNintendoSwitchで発売された『真・女神転生V』にシステム修正、追加シナリオなどを加えたうえで、PC/PlayStation/Xbox/Switchでのマルチ販売に移行した、所謂「完全版」のソフトだ。筆者は移植前の『真・女神転生V』はプレイしておらず、今作を初見でプレイしたうえでのレビューである。 

レビュー時点でのプレイ状況は下記の通り、プレイ時間は120時間ほど
1週目:創世の女神編 難易度Normalでクリア
2週目:復讐の女神編 新生 難易度Hardでクリア

開発元パブリッシャーリリース日
ATLUSSEGA2024/6/14

1週目:創世の女神編 難易度Normalクリア時点での感想

本作にはオリジナルであるSwitch版に収録されていた「創世の女神編」と、移植にあたり今回新規で追加された「復讐の女神編」の2本のシナリオが収録されており、ゲーム開始時にどちらのシナリオをプレイするか選択することができる。私はオリジナル版からプレイするのが筋だろうと思い、「創世の女神編」からプレイを開始した。また、過去作『真・女神転生Ⅲ』『真・女神転生Ⅳ』のハードコアな難易度が頭にあったため、Normal難度でプレイを開始した。
ゲーム開始時に謎の少女の手を取るかどうかでシナリオが分岐する


1週目クリア時点では正直「つまらない作品ではないが凡作」という印象を持った。

オリジナルのストーリーである「創世の女神編」のシナリオは、はっきり言って出来が悪い。というか、評価をするほどの内容がないのだ。「2~3時間プレイするごとにキャラクターが一言二言喋るだけ」であり、ストーリーと呼べるようなシロモノはそもそも存在しない。戦闘部分が面白いから継続できたものの、プレイしていてかなりキツかった。

また、シリーズの伝統であるルート分岐もかなり雑に扱われており、ストーリー中の会話選択肢などはED分岐にまったく関係がなく、ラスボス直前の選択肢でEDが変わるという非常に退屈なシステムになっている。(真・女神転生Ⅳはさすがに複雑すぎたが…)

難易度Normalでのプレイもよくなかった。過去作ではNormalでも十分に難しいような作品だったが、本作はどこでもセーブやアナライズ/悪魔合体の仕様などシステム面の充実も影響し、過去作と比較し難易度が大幅に易しくなっている


以上のことから、初見プレイでは「復讐の女神編」且つ「Hardモードでのプレイ」を強くお勧めする。特に「創世の女神編」はストーリーの補完以外の目的ではプレイする価値はほぼ無いと断言できる。難易度はゲーム中いつでも変更できるため、難しすぎると感じたら、難易度を下げるとよいだろう。

復讐の女神編について

1週目で本作には微妙な感想を抱いていたが、せっかくの完全版なので追加シナリオもプレイしておこうと思い、2週目「復讐の女神編」を開始したのだが。。。

「創世の女神編」とは全くの別物だった

「創世の女神編」で投げっぱなしだった伏線はきちんと回収され、ストーリーには深みと牽引力が持たされ、敵味方共にキャラクターはより魅力的に描写されるようになっていたのだ。なぜ、これを最初に作ることができなかったのかと強く言いたい。

決して、スペシャルなストーリーではないが、プレイするに堪える及第点以上のストーリーであることは間違いない。再度の忠告になるが「創世の女神編」は落第レベルの虚無シナリオなので、初見でのプレイはお勧めしない

新シナリオで追加される魅力的なキャラクター達

難易度と戦闘の面白さについて

本作のHardモードの戦闘は、個人的には「歴史上のターン性コマンドバトルRPGの中で最も面白い」作品であると太鼓判を押したい。

本作は主人公を含めた4人のパーティーを編成しターン性のコマンドバトルを行うのだが、非常にユニークで面白い点がいくつもある。主人公以外の3枠にはスカウトや合体で手に入れた悪魔を編成してするのだが、270種以上存在する悪魔にはそれぞれパッシブで効果を発揮するユニークスキルが設定されており、また多くの悪魔は固有の専用の戦闘スキルを保持している。最大8枠のスキル枠には合体システムを用いることで自由に好きなスキルを設定することができるが、悪魔にはそれぞれ得意/不得意なスキルが存在し使用した際の威力や消費MPに補正がかかるようになっている。そのためプレイヤーは悪魔の得意分野を生かす形でスキル構成を考える必要がある。

また、悪魔の弱点や耐性も非常に重要である。本作は弱点を突くこと、突かれることで大きく戦局が変化する真3以降伝統のプレスターンシステムが採用されており、耐性も考慮したパーティー編成が求められる。さらに、主人公は写し身というシステムを用いて、好きな悪魔の耐性やスキルをコピーして使用することができる。
様々な特徴が悪魔それぞれに設定されている



パーティー編成は非常に自由度が高く、多くの選択肢が与えられるため、強力なボス達を倒すためのパーティーや戦略を考えるのが非常に面白い。

そしてHardモードの難易度調整があまりにも秀逸である。ストーリーを通して大量に登場するボスたちは、プレイヤーが全力で対策を考慮したパーティーをもってして、全リソースを吐ききってギリギリ倒せるレベルに調整されている。理不尽と高難易度の綱渡りを全編通して見事に成功させており、この仕事には驚愕せざるを得ない。

ストーリー中何十体も存在するボスとの戦闘が、それぞれ都度最適な編成や戦略を考えて攻略することがとても楽しく、2週目は最高の体験を維持したまま冒頭からエンディング後までプレイをすることができた。

残念な点について

やはり一番残念な点は、このソフトが所謂「完全版商法」という形で販売されたことだ。最初からこのクオリティで発売できていれば、一部ユーザーからの反感も買わず、また、創世の女神編という汚点を歴史に残すことはなかっただろう。しかしながら、本作のクオリティは非常に高く、このような形でも販売されプレイできたことには感謝をしたい。

また、その他の部分の不満点として、ストーリーのある時点から敵レベルの調整に大きな段差があり(龍が如く7の真島/冴島みたいな感じ)、サブクエなどを用いたレベル上げを強制されるタイミングがあること。マップの構造が無駄に複雑な割に、大したアイテムはなく探索に徒労感を感じること。そもそもダンジョンがつまらないこと。などのいくつかの不満はあるが、本作の全体の評価をさげるほどの大きな問題点ではないと感じる。

総評

真・女神転生Ⅲから進化を続けてきた女神転生シリーズの集大成といえる素晴らしい作品。ターン性コマンドバトルRPGのマスターピースになるだろう。完全版という形で売られたことだけが残念でならない。

  • 驚異的にスリリングで面白い戦闘パート
  • 自由度が高く奥が深いパーティー編成
  • 真3以降の良いとこどりでシリーズ集大成のシステム
  • 創世の女神編がつまらなすぎる
  • システムが親切すぎて過去作とくらべるとHardでも難易度は低く感じる
  • 所謂”完全版商法”の販売形式になってしまった

コメント

タイトルとURLをコピーしました